作家佐藤愛子さんの著書に「九十歳 何がめでたい」というタイトルがつけられている本がある。
超高齢者の年齢を聞くと、社交的には、相手が高齢であればあるほど長寿に敬意を払う意味でも反射的に「お元気そうで何よりです。おめでたいことですね」と言ってしまう自分を省みる。なのに、ご自身が超高齢に到達し(写真やメディア記事で)拝見する限りお元気そうな佐藤愛子さんが「何がめでたい」というタイトルをつけられたことを私は彼女なりのユーモアセンスくらいにしか受け取っていなかったように思う。
私はまだ71年の年月を重ねたにすぎず、佐藤愛子さんの域に達するにはこれから20年を要するわけだけれど、近年の世相と我が身の限界を重ね合わせてつらつら考えると......「何がめでたい」という愛子先生の言葉がスーッと脳の中にしみこんでくるような気がする。
2022年が、収束するどころか泥沼化する波乱のうちに終わり、2023年という新たな年明けを迎えた。
戦(せん)やまぬまま
年改まりたる元日の
めでたくもあり
めでたくもなし
(露草)
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