「ねえねえ、あなたエクセル使ってる?」
「この仕事初めて三年目だけど、最近やっと何とか使えるようになったのよ」
「良かったー!あなたに教えてもらおうっと」
「IT関連の仕事をしている娘が、コロナで在宅勤務しているんだけど、娘には聞きづらくてね・・・」
これは二週間くらい前に交わした知り合いとの会話。彼女は犬の朝の散歩の途中。その前に二度くらい出会ったのは偶然だったと思うけれど、こちらとしては駅まで犬を引きながら付いてくるので困惑していた。彼女は無類のお喋り好き。相手がペットを連れていればこれ幸いと、ペットをダシに延々とお喋りが続く。私の場合は、子供が同級生だったということの顔見知り。
上記の会話の次には、駅近くで待ち伏せされてメールアドレスを押し付けられた。
「あなたから空メール送ってくれる。そうしないと私からメールできないからね。はい、これ私のメールアドレス」とアドレスを書いた紙を押し付けられた。
この小さなメモ書きをもらって二週間、私はこれをどうしようと考えた。相手は時間がタップリあるかもしれないが、私は週に五日の仕事に穴をあけないように通うことで精いっぱいの身。エクセルが使えるようになったと言っても、会社のIT専門部署に助けられながら、やっと操作ができるようになった程度。人に教えるなんてとんでもない!のだ。
彼女は簡単にエクセル教えてと言うけれど、だいたいそれを覚える目的は何なのだろうか?私は仕事をする上で使わざるを得ないと悟って必死に試行錯誤したり専門部署の助言を頼りに、覚えるべきことを習得したが、それ以上の応用はできないことを自覚している。
彼女は、短期のパートタイマーは経験しているようだが、基本はご主人の収入で家計を支えられてきた専業の主婦。私より少々年上のようだから70余歳だろう。このごろ毎日、犬の世話以外にすることが無くて「よし、時流に乗るためにパソコンでエクセルでも覚えるか」と一念発起したのかもしれない。
一方の私は、誰の援助も受けられない状況の中で、さまざまなハンディを抱えながら独りで一家の生計を支えてきた労働人生。同年配の男女で考えれば、どちらかというと男性に近い社会感覚だと思う。職業に就いていれば、趣味より仕事が優先は当たり前。職務が滞りなく果たせてこその休日であり趣味も可能になるという考えでいる。
若い頃は休日に趣味を存分に楽しむ余裕もあったけれど、寄る年波には勝てず、最近の休日はもっぱらノンビリダラリと体力気力の回復だけで過ごしたいのが本音。
とか何とか考えつつ、彼女に空メールを送信することもなく二週間を過ごしていた。昨日、再び出勤時に出会った彼女に、私はキッパリ「申し訳ないけれど、エクセル教えるなんて私にはできないから、ごめんなさいね」とお断りを伝えることができた。
あーあッ、これでまた私は恨まれる人間になるのだろうなぁ。でも構わない。できないことはできない、嫌なことは嫌だと、ハッキリ言えなかった過去の私を反省して、これからは安請け合いや気の進まないお付き合いはしないことに決めたんだもの、これでいいのだ!
コメントする