「平成三十年」上・下 堺屋太一:著 朝日文庫
2002年刊行だというから、今から17年前に日本の未来を予測して書かれた小説。著者はあとがきで「あって欲しくない日本」を予測して書いたと述べている。平成三十年を過ぎて、現実は著者が予測した通り、あるいは、それ以上の困難な事態に直面していると感じる。
この小説に描かれた日本の直面するであろう困難には世界情勢の変化と暴力的自然現象が含まれず、日本人の倫理観や学力の低下という状態も予測の範囲外だったのだろう。
それにしても、約二十年前にこれほどの予測ができたということには驚きを禁じ得ない。堺屋太一という人物の見識に脱帽。
先日スマホでニュースダイジェストをチェックしていたら、現在の世界に広がりつつある傾向を「今だけ、カネだけ、自分だけ」と表現している識者の言葉に出会った。この短い表現の中に簡潔に的確に言いえて妙だと感じ入ってしまった。
今や平成三十年は通り越し、元号も変わり、時代は混乱の極みを生じている。「今だけ、カネだけ、自分だけ」という考えが人類を滅ぼす端緒になりそうな危惧を感じる。人類が未来永劫に永久不滅な生物であらねばならないとは思わないし、思ってもどうしようもないことだけれど、もう少し直近の未来を予測して、バランスを保ちながら衝突を回避するような動きにならないものだろうか・・・
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