高齢者が運転する車の大事故が相次いで報道されている。いずれも被害者が若年層であることがなんとも痛ましくてしょうがない。
「若い者には負けない」などとどんなに見栄を張ろうと、人間の体には使ってきた年数だけの衰えが生じていることは否定ができない。毎日鍛えて体はまあまあでも反射能力や判断力は確実に落ちている。
義父は高齢までバイクに乗っていた。その理由が「足が思うように運べないからバイクで移動するほうが早くて楽なんだ」ということだった。歩行はヨチヨチとしかできないのにバイクに乗っている義父を見て、危うさを感じずにはいられなかった。もう40年前の話だ。幸いにも大きな事故は起こさなかったけれど、その考え方自体が間違っているように感じた。
年を取ったらそのように、自らの衰えを直視し、受け入れ、諦めることの選択を適切に行わなければ傍にとんでもない迷惑をかけてしまう。
人間がどのように生を終(しま)っていくのかを身をもって見せること、先行く者が後に続く者たちに遺せる最後のプレゼントは、財産でも社会的地位でもなく、「人生の終い方」こそが一番大事であり貧富の差なく誰にでも用意できる贈りものだと思う。
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