高畑勲監督のジブリ作品「かぐや姫の物語」を観てきた。
水彩画調の画面が優しい。
木や草や花や虫などが多く描かれていて、植物好きな私には嬉しかった。
特に、露草の花が多く描かれていて、私の目を引いた。
かぐや姫が美しいということで、多くの求婚者が押しかけるわけだけれど、
かぐや姫の心を動かせるものは物でもなく金でもない。
一人の人間として自由闊達に生きたいという女性の心を動かせるのは、
対等の目線で喜怒哀楽を共にできる自然体の男性であることが、
かぐや姫の外見の美しさに惹かれる男性にはわかっていない。
かぐや姫の存在を、珍しい宝物と同レベルに例えて褒めちぎったつもりになる男たち。
形ある宝物や金銀などは、それがもたらす社会制度的価値によって人間に重宝される単なる物質。
かぐや姫に象徴される"人の心"は、そうした社会制度によって裏付けられる価値では充足されない。
彼女は繰り返される命の営みの中に暮らしてこその充足感に惹かれて月から地球に降り立った。
植物は、一見枯れたかに見えても、季節が巡ると地中で眠っていた根から再び芽を吹いて花をつけるものが多い。
一年草と言われるものも、こぼれた種から翌年の命が芽生える。
花や野菜を育てたり、自然に親しんだりしてみると、そうした植物をこよなく愛おしいと思える。
「ほんとうに豊かに生きるとはどういうことか」との問いかけをされたような気がする。
翁の声が、先ごろお亡くなりになった地井武男さんの声で懐かしかった。
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