p.m.10:00からNHK教育TVでETV特集「なまえをかいた」という番組を視聴した。
大阪の富田林に住む84歳の吉田一子(よしだかずこ)さんという女性は60歳になるまで鉛筆を握ったこともなく、したがって字が書けないまま半生を過ごしてきた。本人いわく「人中に出ても、大勢の人の後ろのほうで目立たないようにしていた」とのこと。銀行に行って自分のお金を引き出そうにも、引き出し伝票に自分の名前も住所も記入できない。銀行員に頼んでも代筆を断られる。何度も、悔しく情けない思いを味わったという。
そんな彼女が、60歳からひらがなを学び、字が書けるようになった。読み書きの先生のすすめでひらがなで作文も書けるようになった。そして、それは「ひらがなにっき」という絵本になった。
絵本の中の文章はどれも、飾り気のない日常会話のような文章だ。生半可に勉強して、字が書けることが当たり前のように暮している者には到底真似できないような、まっすぐな文章だった。
義務教育が施行されたのは遠い昔のこと。この国に、読み書きの出来ない人は、いまや殆どいないのではないかと思っていた自分の無知を恥じる。このような人たちは、自分の権利(教育を受ける権利)さえ要求できないままに年齢を重ねてきた。そして、その不自由さや不利益は無関心のまま放置されてきた。この国はそんな国だったのか。
思いを文字で表現できる喜びや文字で伝えられることを理解できることの意味を、番組を通して改めて考えさせられた。
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