新型コロナウイルスパンデミックが強要してくる「新しい暮らし方」(この「新しい***」という表現には強い抵抗を感じるが)と言うわけではないが、最近、古書店に出入りすることが多くなった。行く前から買いたい本が決まっているわけではなく、古書店の書棚の前に立ってもどれを選べばよいかもなかなか定まらない。結局、手当たり次第に手に取ってパラパラとページをめくり、書棚に返すことを繰り返す。
芥川龍之介の著作を買った。「或阿呆の一生・侏儒の言葉」。読み始めると龍之介の遺稿となった文章が続く。むかし読んだ芥川龍之介の作品とは違う、言い方によれば支離滅裂ともいえる文章が展開している。ああ、龍之介が自ら命を絶つに至るまでにはこうした行きつ戻りつを繰り返していたのかと、彼の精神の患いをなぞっていく。
久しぶりの芥川龍之介。
若い頃に読んだ龍之介の作品に対する私の読後感と、龍之介が至ることのなかった年齢に達した現在の私の読後感には明らかに違いがある。それは当たり前。とは言いながら、芥川龍之介は芥川龍之介であることを十分に再確認できる読後感である。
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