佐伯啓思:著 「西田幾多郎 無私の思想と日本人」
4年前に出版された上掲の本を読んでいるのだが、
混乱する今日の世界情勢を理解する一助になりそうな箇所が多々ある。
その中で、まさに今にあてはまりそうな部分をメモしておこうと思う。
以下、引用---------(p.170 ~ p.171)
(前略)
そしてここには実は大変に大きなしかも深刻な矛盾が含まれていました。そのことは後述しますが、さしあたり西田が次のように述べていることに注意しておいてください。
今日、科学の発展による機械工業の勃興と資本主義の発展によって世界は一つになった。しかし、このような機械工業や経済システムが世界を一つにするということは、それを動かす主体が世界を支配することを意味している。それは一つの国家が主体として世界を支配することであり、帝国主義である。この時、一つの国が大国で強国なら一時的に平和は保たれるかもしれないが、それは他の国を奴隷化することだ。これは人間を堕落させることであり、また戦争を引き起こすだろう、と西田はいう。
妙にこの21世紀のグローバリズムの時代を予感させる議論ではないでしょうか。80年前よりもはるかにわれわれは、ITを含む機械技術と市場経済によって画一的で単一の世界へと編入されてしまいました。それを支配するのはこの技術と市場経済を制覇するもので、現下ではアメリカが覇権をもっているのです。また、だからこそ、技術と市場をめぐる覇権競争が生じているのです。
(後略)
-----------引用終わり
80年前、既に西田は現代の世界の混乱を予見していた。
そして、佐伯啓思も、現在進行形の米朝のかけひきの混乱が発生する4年前にこの本を出版している。
まさに「温故知新」、過去の思索に学ぶべきことは多そうだ。
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