TBSの金曜ドラマで「わたしを離さないで」が始まった。
原作は英国在住のカズオ・イシグロの「Never Let Me Go」。
6年前にこの本を読んだ時は衝撃だった。
私の場合、この衝撃に類似する本は「アルジャーノンに花束を」。
「わたしを離さないで」と「アルジャーノンに花束を」に共通するテーマは、
医療発展の為に犠牲にされる人間について。
優位な立場にある人が、自分が救いたいと願う人間の為に、他の人間の肉体を治療の素材とすることとは?
また、「わたしを離さないで」では、素材提供の為に人為的に人間を作り出すこととは?と問われているように思う。
移植医療に関しては、一時期ほどニュースに取り上げられなくなったように感じる。
それは、移植が、既に確立した医療として定着したからなのか、
はたまた、提供者(ドナー)の数が確保できなくて移植医療が行き詰まっているのか、
素人には分からない。
移植の為の臓器提供は、
心という目に見えない働きにより行動を左右している人間個体にとってはハードルが高い決断であることは間違いない。
だからこそ「わたしを離さないで」では、親子・きょうだい・親戚などという、
理屈抜きの血縁関係を断ち切った生体として人為的に人間を作り育てる設定にされている。
親はいなくても、塀の外の人間社会との接触を制限されても、人間という存在である以上、感情は育つわけで、
その辺りの葛藤などが作品の中に描かれていたように思う。
読書後数年を経ているので、内容に関する記憶は曖昧になっている。
これからのドラマの展開を追うことにしよう。
昨日の一作目は、原作を読んでいたからこそ分かる部分もあったように思う。
着古された服を身にまとい、画面全体の色調をグレーにして、
原作の醸しだす雰囲気を伝える演出がされていたように見受けられた。
内容は今後も、決して明るい方向には展開して行かないだろう。
にも拘わらず、この本をドラマ化したTBSの選択には一目置きたい。
著者のカズオ・イシグロに関しては、
幼い頃に両親に伴われて英国に移住し、現在は英国人として作家活動をしているらしい。
「わたしを離さないで」を読んだ直後に、NHK Eテレに出演された番組を視聴したことがある。
注目したい作家の一人である。
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