つい2?3日前もテレビ番組の解説者が「日本はいつからこんなにモラルの低い国になったのでしょう」と嘆いているのを聞いた。"品格"を取り上げた本が話題になり、あれにも品格これにも品格と、一時期"品格"という言葉のバーゲンセールのようになってしまった。言葉は踊れど人は踊らず、"品格"に関する話題はいつの間にか消えていった。
どんなに能力があろうと、財を成そうと、体力まかせに活動しようと、誰かを踏み台にし傷つけて我が身だけの利を優先する生き方は、とても品格とは程遠いと言わざるを得ない。
私は常々、人間関係においてつまづくと、まず自分に非があるからだと思ってしまう傾向にある。実はその考えに自身が納得しているわけではないのに、追い込まれた苦しい状況を打開するには私が変わるしかないと考えてあがいてきた。挙句に、いつも孤立することが多かった。「なぜだ!」と叫びたい気持ちを押し殺して、私が駄目人間だからこうなるのだと結論付けてきた。
この度その「なぜだ!」という私の疑問に答えてくれるような本に出会った。「知らずに他人を傷つける人たち」?モラル・ハラスメントという『大人のいじめ』?香山リカ:著 ベスト新書。キーワードは"自己愛性人格障害"。この性格傾向にある人は自分の行動が他人の心に傷を負わせていることに対する自覚がない。フランス人精神科医マリー・フランス・イルゴイエンヌの著した本が紹介されてから日本の精神医療界でも適用されるようになった見方のようだ。
もともとが外国の症例研究からの発想であるので、同じ"自己愛性人格障害"によるメンタル事例でも、外国人と日本人では背景の文化や民族性の違いで多少の差異があるという。日本人に当てはめた場合「身近な他人の気持ちがわからない人」「身勝手なコミュニケーションの一方通行しかできない人」と言ったほうが分かりやすいのではないかと著者は書いている。こうした人と出会って被害を受けた人間は(私が悪いから・・・)(私が駄目だから・・・)という気持ちになるのだという。事態を改善するためには、被害者はそうした性格傾向の人間から遠ざかることだと著者はアドバイスしている。
過去長らく自分を苦しめてきた「なぜだ!」に対して、やっとひとすじの光明を見出したような気がする。そんなに自分を責め苛まなくても良かったんだと。人生半世紀を過ぎて見出した心の安寧ではあるが、つきものが落ちたような安堵感を覚えている。
今日からは新しく生き直そう。これまでの分も取り返すべく。
コメントする