久しぶりに一冊の本を最後まで読んだ。
名も無き古老の話を、日本各地に訪ね歩いて聞き書きした宮本常一の本。
識字率が低い時代には、生活全般の知恵や知識は口伝で記憶するしかなかった。
その当時の年寄りは、実に多くの物語が頭の中にしまい込まれていたようだ。
文字を書くことが一般的でなかった時代から教育の普及で誰もが読み書きできる時代へ、
そしてキーボードで打ち込めば、さまざまな知的活動が可能になった現在。
今や我々は、経験者から直に聞いて何かを知ったり覚えたりする必要がなくなった。
知らないことは即検索で何でも知ることができる。
でも、簡単に得た知識は、簡単に忘れ去ってしまうような気がする。
また、ネット検索で情報を読んだだけで満足してしまっているような気もする。
何事も、自分でやってみなければ身に付く深度は浅くなる。
今や、かつての日本を語ることのできる年寄りは、社会からどんどん姿を消しつつある。
あるいは老齢による死であり、認知症その他の病であったり。
歴史に名を残すような特別な人物の話ではなく、
市井の名も無き一般日本人の話を、もっと聞いておいた方が良いのではないか?
そんなことを考えさせる一冊であった。
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