「何も言えねえ」

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タイトルの言葉は、水泳平泳ぎで金メダル確定した時の北島康介選手がインタビューに応えて発した感極まった表現。

 

ここに記したいのは、彼のようなポジティブな意味合いの「何も言えねえ」ではない。

 

昨今、差別用語狩りがひどくなって言葉の使い方が難しい。

 

先日のこと、職場に届け物に来た業者から依頼者の机を訊ねられた。

依頼者の名前が出てこないのだが、女性だったという。

その担当には二人の女性がいて、一人は年配で他方は若い女性。

業者は机の上に依頼品を置きたかったのだ。

 

その時、部屋には業者と私と主任の女性の三人が居た。

主任女性は、少し離れた場所でパソコンに向かって作業中。

 

机を訊ねられた私は、業者を案内しながら「若い女性のほう?それとも年取ったほう?」と確認した。

馴染みの業者だったのでわざと砕けた言い方をしたのだが、

さすがに(年取った)はまずいかもと「あ、ベテランのほう?」と言い直した。

 

その時、間髪入れずに「露草さん!」と声が飛んできた。

主任女性がパソコンから視線を上げることもなく発声したのだった。

 

「ああ、ごめんなさい。年齢のことを言うのはハラスメントになるのでしたね。気をつけます」

とは言ったものの釈然としないわだかまりだけが胸の内に残った。

 

業者は巻き添えになりたくないとばかりに、そそくさとその場を立ち去って行った。

 

管理職を目指すその主任女性は、何かにつけ主導権をとりたがる傾向がある。

今年の4月に転任してきたばかりなので、私としてはできる限りのサポートをしているつもりだったが、

職場にも慣れたこの時期になって、当初の謙虚さが影をひそめてきたように見受ける。

だが、(鶴の一声)で人を黙らせるほどの人望や仕事ぶりとは思えない。

 

今回のことは単なる《言葉狩り》だったような気がして、私としては後味が悪い。

 

現在私が働いている職場には、軽口や冗談を言い合って談笑できるような雰囲気が無い。

同僚たちは無駄な言質を取られないように、ただひたすら黙っている。

たまに、私のような立場の弱い人間が意見を述べても、

意をくむ努力をしてもらえるどころか反論と陰口の末に無視と蔑視が始まるという、何とも情けないことに終わる。

 

従来から存在する差別には無頓着なのに、現代社会で注目されている《差別》に関しては神経を使う。

それも、自分が標的にならない為の表面的な防御としての神経の使い方。

差別の本質を突き詰めて考えていない人は表面的な言葉や態度にこだわる傾向があるように思う。

《差別用語》を指定したり、さも公平平等に扱うような態度を見せたりしても、その内心には優越意識が垣間見える。

 

言葉も行動も軽い時代になったものだ。

この頃頻繁に思うこと、それがタイトルの「何も言えねえ」。

「もの言えば唇寒し秋の風」とも・・・

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このページは、tsuyuが2014年7月13日 08:17に書いたブログ記事です。

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