時
波打ち際の砂を ひとつぶ ひとつぶ 掌に集めるようにして 私は 生きてきた 打ち寄せる波 押し寄せる波に 足下の砂は崩れようとも 時は 止まることなく 私の手も 休むことはない 私の体を 拾った砂粒の数だけ 時間が通り抜けていく 砂粒に倦み 波に足洗われつつ 夜のしじまに ひとり 見上げる 暗黒の空 キラリと輝く星の光が 胸の奥に届く時 私の体は 幾光年も経た 光の旅の終着駅
(1988/10/24)