第1回 女性の生き方とストレス
稲葉 昭英 東京都立大学助教授
【講師について】
パートナーが忙しい職種のため、現在6歳の男児一人の育児・家事全般を主に受け持ちながら、自らも大学の仕事をしている。
【講座のまとめ】
現代生活において、“ストレス”とどう付き合っていくかは、大きな課題である。
この講座は、女性が対象であることから、主に女性のストレスについて語られる。
まず、ストレスを感じている人の性別年齢別比較のグラフを見ると、12歳から85歳まで、各年齢で女性の数値が高い。
ピークは、男女ともに40−44歳ごろ。末子年齢7−12歳ごろ。
共働きの女性に比べ、専業主婦のほうがストレスを感じる度合いが大きい。
では、女性のストレスはどのような問題に起因するか、と見ていくと(ケアに関わる仕事が多い)(幼い頃からのしつけの“男女差”)が浮かび上がってくる。
※ ケアとは、他者のお世話をすること
女性が社会の中で多く担当している仕事は育児・家事・介護・対人サービス。これらは、全てケアの仕事である。ケアの仕事は、感情が介在しながらの労働であり、精神的・肉体的両面で疲労するが、その労働の成果・結果は得られにくく、構造的にストレスを生みやすい仕事である。
その結果、【バーンアウト=燃え尽き症候】になり易い。
バーンアウトしてしまうと「感情的な枯渇・相手への敵意】が生まれ、仕事の性質上ストレスがケアの対象者への攻撃の形となる場合がある。
バーンアウトし易い職業としては、看護職・教師・精神科医・福祉職などがある。
ケアの仕事の難しさは(課題の多さと達成の困難さ・感謝や評価を得られにくい)ことである。
こうしたことから、児童虐待や高齢者虐待へと発展する可能性を引き出してしまう。
では、何故そうしたケアを女性が受け持つことが多いのか?
まず、幼い頃からの「男だから・女だから」のしつけの刷り込みが考えられる。
次に、ケアという仕事の性質上、身体的な接触の場面が多く、性的なイメージを与えにくい女性の接触の方が、より適性であろうと考えられたのではないか。
中年期のストレスについては、(反抗期の子ども・母子の関係・仕事優先の夫との夫婦関係)があげられる。
結婚生活については、結婚するメリットはおもに男性側に大きいのではないだろうか、ということ。
家庭生活においては、妻が夫をサポートする度合いが、その反対よりも大きく、その関係を解消することは、社会的に経済活動の場の少ない女性にとって、大きな決断とエネルギーを必要とする。その結果、割り切れない思いを抱えながら、家庭生活を継続することは、女性にとって大きなストレスとなっていく。