ふるさと

母が送ってくれた野菜
凹凸がある曲がったキュウリ
やせたナスビ
大小さまざまの玉ネギ
そしてふるさとの土のついたジャガイモ

新聞の折込みチラシに
幾重にもくるまれた三枚の千円札
ーーーそんとな都会で やっていけるんね
    送れるうちに送っちゃげるけぇ
    まあ がんばりないーーー

見知らぬ土地で夫に先立たれた私は
子どもが生まれ育った地に永住を決め
自分のふるさとを捨てた
ひとり暮らしの母のもとへ帰り
共に暮らすことより
子どもの現在(いま)と将来(これから)を選んだ
それでも なお
母は私のふるさとであることを止めない
私もいつか我が子のふるさとに
なれるだろうか



「選者の言葉」    関根 弘

ふるさとの喪失と気の短い世代の誕生は、一枚の銅貨の裏表ではなかろうか。作者は重い課題を背負って見知らぬ土地に生きています。

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これは、「婦人公論」1988年10月号の読者の投稿のページに入選した詩です。
夫を亡くして二年目でした。