「哀しみは」


ひとは哀しみを背負って生きている
まるで 赤子をあやすように
背中の哀しみを
ゆすりながら
なだめながら
聞こえぬ声で ひとは
子守唄をうたっている

哀しみをいつくしむひとの目には
清らかに深い泉が わく
その泉に見つめられたひとは
いのちを息づかせ
新たな希望に立ち向かう勇気をふるいおこす

こうして哀しみは
ひとからひとへ
生きる力をつなげていく

怖れることはない
背中の赤子は
哀しみという名の 希望の申し子

(2003年4月30日)