第2回  女性のためのストレス対処法

稲葉 昭英   東京都立大学助教授

【講座のまとめ】

では、どうすれば被ストレスの男女差は減らせるのか?

ストレスは、先進国の女性ほど感じる度合いが大きい。
そこで、先進国のこの問題に対する方向性を見てみると、

ヨーロッパ諸国・・・原則として、育児は家庭で行う。その為に、長い育休が与えられる。 高齢者介護は外部化
            ケアの総量は維持・夫婦で分担。

※  省力化(人の手を要する事柄そのものを減らす)
※  外部化(家庭外の人・施設等の利用)

北欧諸国・・・・・・・外部化・ケアの総量を減らす・夫婦で分担

アメリカ・・・・・・・・・省力化・ケアの総量を減らす・おもに妻の分担

日 本・・・・・・・・・・???????

現在、この問題に関する日本の政党各党の方向は、
・自民党→ヨーロッパ諸国    (行政の力を大きく位置付ける)
・民主党→北欧諸国
・自由党→アメリカ      (行政を信用しない)

以上は、国家レベルでのケアへの対応。

では、個人レベルではどうすればよいのか?

ケアから来るストレスの大きな部分は、精神的なものであり、これらを軽減するためには、対人関係の支援が有効である。 (支援と援助は異なる。支援とは、精神的な支えのこと)
ケアする人のことを、解り・評価し・認めてくれる人の存在が大きな力となる。
家庭においては、この役割の最も適任者は、配偶者である。

ケア従事者への理解は、どのようにすれば深められるのか。
・自らもケアに手を貸す→仕事内容への理解
・社会的な労働時間の短縮→ケア参加の時間の確保
・保育・介護の場における男女職員の混在
・ジェンダーフリー教育の必要 (男の子だから・女の子だからという役割意識を植え付けない)


ケアには、する人・される人の関係が親密であればあるほど、そこから受けるストレスは大きくなるというパラドックス(逆説)が成立する。

家族関係を良好に保つ努力が求められる所以である。

では、バーンアウトしないためにはどうすればよいのか?
「うまくいかない」のが普通だと認識し、失敗談や問題点を語れる場所・相手を持つ。  (マスコミや書物の経験談には「うまくいかなかった」話は取り上げられないものと知ること)

これからのケアの展望としては、家族のあり方と密接な関連性が指摘されています。

未婚者の増大傾向から、ケアとは関わりなく過ごす人が増え、これまで当たり前のように、夫と妻の役割分業として語られてきたこの問題が、家族を持つ人と持たない人の間の役割分業として語られるようになるのではないか、ということです。

これらの問題点を踏まえた上での社会政策の行方には、様々な難しい課題がありそうです。